微熱でクーリングを行うことについて調べてみました。同僚看護師から学ぶこと②
このようなやりとりは日常茶飯事です。私の勤務する脳神経疾患療養病棟での微熱の定義は37℃以上です。37℃前半であってもクーリングされていることがしばしば見受けられます。
今回のケースから考えてみたこと
①微熱でのクーリングの効果
②そして熱が上がるかもしれないからクーリングを行う行為は正しいのか
解熱の為にクーリングをされている看護師さんが多いはず。その中でも微熱でクーリングをしている看護師さん向けと言うマニアックな路線の記事です。良ければそのまま読み進めて頂ければ幸いです。
前回記事はこちらです

微熱でのクーリングの効果について改めて調べてみました
私が勤めるのは脳神経疾患の療養病棟です。患者様からの訴えはありません。なので訪室した際のフィジルカルアセスメントが重要になります。
そこでの同僚看護師の発言の中で以下が多いです
なんだか根拠がイマイチふわっとしているのです。私は疑問に思いつつも、現在も同僚看護師の言う通りにクーリングしております。病棟で生きていく為の処世術です。
根拠を持って、正しい知識を持ちたいところです。そんなわけで奥深いところには触れず、ざっくり調べ直してみることにしました。
最初に微熱の定義のまとめ
微熱の定義は様々あるので下記を引用してみました。そもそもの言葉として病棟内で使用する際には、病棟ルールに合わせた使用方法がベストに思えます。
微熱にはとくに厳密な定義があるわけではなく、一般的には37・0~37・9℃で、体熱感がある場合をいいます。体温の個人差がかなりあることを考慮すれば、37・0℃以上でも必ずしも微熱とはいえない場合もあり、また37・0℃未満でも必ずしも平熱とはいえない場合もあります。
日本の感染症法では、37.5℃以上を発熱、38℃以上を高熱と定義している。なお、直腸温は口腔温より約0.6℃高いことが知られている。また、高齢者では感染症を起こしても発熱は軽微になる傾向があること、女性では排卵日から月経の日までは、0.6℃ほど基礎体温が高くなることが知られている
発熱・不明熱 | 今日の臨床サポート – 診断・処方・エビデンス –
高体温(hyperthermia)と発熱(fever)の違いとは?
今回は微熱でクーリングをすることの意義について考えるわけですが、発熱と高体温の区別は覚えておくと便利です。以下にわかりやすい記事からの引用を載せておきます。
広義の高体温とは,中枢温が高くなった状態すべてを指しますが,一般的には狭義の「高体温(hyperthermia)」と「発熱(fever)」に分類されます。狭義の高体温とは,セットポイントは正常で,過剰な熱産生や体外環境の影響によって起こる体温調節の異常を言います。発熱とは,炎症性サイトカインの作用により,セットポイントがより高値にリセットされた状態を言い,その原因には感染性と非感染性があります。
高体温と発熱の原因
高体温
・脳血管障害 ・熱中症 ・悪性高体温 ・悪性症候群
発熱
・感染性
・非感染性
解熱目的のクーリングについて調べました
クーリングの効果について調べる
クーリングには解熱以外にも使用されますが、今回はあくまで解熱にポイントを絞って考えていきます。
解熱を目的としたクーリング(冷罨法)の部位
頸部(頸動脈)
腋窩(腋窩動脈)
鼠径部(大体動脈)
太い動脈が表在する部位に行うと効果的である。と、ここまでは良く知られている看護師の知識の範疇なはずです。
最近のクーリング事情で言いますと下記を引用しますが、そもそも解熱を目的としてクーリングの効果に疑問符がついております。ただ安易に冷やすだけでなく、デメリットも理解しておくと良いかもしれません。
体温を下げる目的の治療としてのクーリングは、体表面の近くを通っている動脈がある頚部や腋窩、鼠径部へ氷嚢や冷湿布などを適切に当てます。
体温低下を目的としたクーリングの効果と危険性を正しく理解したうえで、体温低下を目的としたクーリングは医師の指示のもと実施しましょう。
現在、体表クーリングの有効性がわかっているのは、「体温調節機構が病的に障害されている場合」または「深い鎮静や筋弛緩薬を使った全身麻酔で抑制されている場合」のみです。それ以外の場合でのクーリングは、寒冷反応(寒気、ふるえ、立毛筋収縮、末梢冷感、チアノーゼ)を引き起こして、酸素消費量を増大させるリスクがあることを覚えておきましょう。
発熱時のクーリングのポイントは?|看護技術Q&A|看護roo![カンゴルー]
私の先輩は言います
上記の引用を読んで頂ければ、それ自体が寒冷反応を誘発するリスクとわかるはずです。
勤める脳神経疾患患者様の療養病棟でのクーリングについて
脳神経疾患の療養病棟なので、既往は脳梗塞後後遺症・脳出血後後遺症・くも膜下出血後など様々な患者様がいます。大きなくくりとして脳血管障害の患者様です。
ここから整理していきます。
高体温の原因としては脳血管障害があります。
脳血管障害=体温調節中枢障害により体温調節が行われないと考える。もし私の勤める療養病棟の脳血管障害患者様が微熱の場合(あくまで熱だけで他に感染を示唆する兆候がない)の原因は高体温も考えられます。
そして脳血管障害の患者様の場合での高体温であれば下記が当てはまります。解熱の為よりかは熱の放散としてのクーリングです。そんなわけで解熱としては不適でした。
熱中症や脳血血管障害による体温調節機構の障害では、セットポイント(基準値)の上昇がないため、解熱剤は効果がありません。クーリングによる熱の放散が必要です。42℃を超えると生命の危機状態になることもあります。
発熱時のクーリングのポイントは?|看護技術Q&A|看護roo![カンゴルー]
微熱でのクーリングの効果。そして熱が上がるかもしれないからクーリングを行う行為は正しいのか
結論
・微熱に対しての解熱効果を期待してのクーリング使用は意図として不適
・脳血管障害のある患者様の微熱であれば高体温かもしれないことを考え、熱の放散としてのクーリングとしての適応はある
・熱が上がるかもしれないからと言う理由でクーリングはそもそも使用しない(寒冷刺激の誘発)
私の調べた結果は以上です。理由づけをしてみました。
ここまで調べたとしても私の病棟は変わらない・・・
今回この記事を作成するにあたり、クーリングの効果について良くわかりました。
ただクーリングの効果がわかったとしても、私は病棟の習わしに従うわけです。そうです、ローカル病棟ルール。郷に入れば郷に従え。微熱ではクーリングは必須。熱が出そうだと言われればクーリング施行。
ちなみに私と同じことを思う人はいるようです。
微熱でクーリングすることに疑問|看護師ライフをもっとステキに ナースプラス
そんなわけで、もし今の職場に新人看護師さんが入ったらしっかりと本当のことを伝えようと思います。
以上。まる(@maru02ns)でした。